CMEは犀の角のように。

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【原著】多剤耐性グラム陰性桿菌を起因菌に含む複雑性腹腔内感染症に対するセフトロザン/タゾバムタム+メトロニダゾールでの治療は、メロペネムでの治療と比べて、治癒率に関して非劣性を示した。

*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。

*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。

 

最も高頻度と思われるESBL産生グラム陰性桿菌をはじめ、多剤耐性菌への対策は今後の感染症治療の課題の一つです。カルバペネム系抗菌薬は既存の抗菌薬の中で非常に広域スペクトラムを持ち、かつ、いくつかの耐性菌への活性を持ちます。だからこそ、可能な状況では温存したい対象です。カルバペネム系抗菌薬温存を考える際の一つの選択肢である抗菌薬についての論文に出会いましたので、学びました。

 

Ceftolozane/Tazobactam Plus Metronidazole for Complicated Intra-abdominal Infections in an Era of Multidrug Resistance: Results From a Randomized, Double-Blind, Phase 3 Trial (ASPECT-cIAI).

Clin Infect Dis. 2015 May 15;60(10):1462-71.

PMID: 25670823

 

【背景】

複雑性腹腔内感染症(cIAIs)を引き起こす病原体において抗菌薬耐性が増加することは、新たな抗菌薬開発を促す(因子である)。セフトロザン/タゾバクタムは新たな抗菌薬であり、多剤耐性緑膿菌やほとんどのESBL産生腸内細菌科に対して活性を有する。

【方法】

ASPECT-cIAIは前向き、二重盲検化RCTである。cIAIを呈する入院患者にセフトロザン/タゾバクタム1.5g +メトロニダゾール500mgを8時間ごと、またはメロペネム1gを8時間ごとで4〜14日間、点滴で投与した。目的は治癒評価目的の受診時(治療開始から24〜32日)における臨床的治癒率(主要評価項目)の非劣性性を証明すること、および微生物学的評価(副次評価項目)の非劣性性を証明することである。非劣性マージンは10%とした。微生物学的アウトカムと安全性についても評価した。

【結果】

セフトロザン/タゾバクタム+メトロニダゾールは、主要評価項目についても副次評価項目についてもメロペネムに非劣性を示した。主要評価項目(83.0% [323/389] vs 87.3% [364/417]; 加重差, -4.2%; 95%信頼区間, -8.91 to 0.54)、副次評価項目(94.2% [259/275] vs 94.7% [304/321]; 加重差, -1.0%; 95%信頼区間, -4.52 to 2.59)であり、事前に設定した非劣性マージンに合致した。ESBL産生腸内細菌科が検出された患者では、臨床的治癒率はセフトロザン/タゾバクタム+メトロニダゾール群で95.8% (23/24)、メロペネム群で88.5%(23/26) であった。そしてCTX-M-14/15 ESBL産生菌によるものについては前者が100%(13/13) 、後者が72.7%(8/11)であった。有害事象発生率は両群において同程度であった(44.0% vs 42.7%)。もっとも多かった有害事象は悪心と下痢であった。

【結論】

セフトロザン/タゾバクタム+メトロニダゾールによる治療は、成人の多剤耐性菌によるものを含む複雑性腹腔内感染症において、メロペネムに比べて非劣性を示した。

 

【まとめと感想】

ESBL産生菌に使用可能なセフェム系抗菌薬の選択肢になりうるかもしれません。カルバペネム系抗菌薬温存の観点から重要なポジションの薬剤になる可能性があります。