CMEは犀の角のように。

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【原著】アメリカ急性期病院における抗菌薬使用と院内発症C. difficile感染症の関連。2006-2012年の生態学的解析。

*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。

*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。

 

C. difficile感染症の薬剤耐性はアメリカにおいて最も喫緊の課題とされているようです。日本では(Saitsunox周囲では)今のところ耐性C.difficileが問題となってきている実感はありませんが、AMR(抗菌薬耐性)への取り組みの一環として重要であることは間違いありません。

どのような抗菌薬使用がC. difficile感染症と関連があるか、学びました。

 

Association between Antibiotic Use and Hospital-Onset Clostridioidesdifficile Infection in U.S. Acute Care Hospitals, 2006-2012: an Ecologic Analysis.

Clin Infect Dis. 2019 Mar 1.

Kazakova SV et al.

PMID: 30820545

 

【背景】

不適切な抗菌薬使用(AU)はC. difficile感染症(CDI)の発生率を上げることに貢献する。院内発症CDI (HO-CDI)に対する抗菌薬使用制限の与える影響は、アメリカ急性期病院(連盟?)(ACHs)においてはこれまで評価されていない。

【方法】

病院レベルでのAUと549 ACHsから得られたHO-CDIとの横断的・同時的関連について調べた。二次CDIのICD-9-CM対応病名がついて退院したHO-CDI、そしてメトロニダゾールまたは経口バンコマイシンで入院してから3日以上治療された患者を対象とした。多変量一般化推定方程式を用い、患者および病院の特徴で調整をして解析した。

【結果】

2006-2012年の間で、年間の非調整HO-CDIおよびAU発生率はそれぞれ、7.3/10,000患者日(PD) (95% CI: 7.1-7.5) と811 DOT/10,000患者日 (95% CI: 803-820)であった。横断的解析において、全AU内で50 DOT/1,000 PD増えるごとに4.4%のHO-CDI増加が認められた。第3,4世代セフェムまたはカルバペネム系抗菌薬の使用が10 DOT/1,000 PD増えるごとに、それぞれ2.1%, 2.9%のHO-CDI増加が認められた。分割時系列解析において、全AUのうち30%以上減少がみられた6施設では、HO-CDIが33%減少した(rate ratio, 0.67; 95% CI, 0.47-0.96)。キノロン系薬、および第3/4世代セフェム系薬使用が20%以上減少した施設では、HO-CDIがそれぞれ8%、および13%減少した。

【結論】

生態学的観点から、全AU減少の中で、キノロン系薬と第3/4世代セフェム系薬の使用減少がHO-CDI発生率減少に関連した。

 

【その他】

2006-2012年の間でフルオロキノロン系抗菌薬使用量は大きく減ったが、同期間のCDI発生数はあまり変わりなかった。考えられる原因として、フルオロキノロン系抗菌薬使用が減少した反面で第3・4世代セフェム系抗菌薬使用量が増加し、全体として相殺されてしまった可能性が挙げられている。研究者の中にはフルオロキノロン系抗菌薬とセファロスポリン系抗菌薬の代替としてペニシリン系抗菌薬を使用することを推奨する者もいる。たとえ抗菌薬使用総量が変わらなくとも、CDI減少に効果があるかもしれないと主張する。

 

 【まとめと感想】

フルオロキノロンや第3・4世代セフェムがCDIを起こしやすいのでしょうか。またはフルオロキノロンや第3・4世代セフェムの使用の中に“無駄”な使い方のものが多いのでしょうか。本結果の解釈は難しい印象です。

ただし、CDIとの関連を脇へ置いたとしても、抗菌薬の使用には妥当性や合理性をもってあたりたいと思います。