【原著】免疫チェックポイント阻害剤使用中のがん患者に対してインフルエンザワクチン使用し、“新規”免疫関連有害事象(IRAE)は増えなかった。
*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。
*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。
がん治療シーンにおいて免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の使用が広がっていると聞きます。ICIは免疫を賦活する治療(ものすごく大雑把な理解ですが)であり、IRAEに注意が必要です。免疫作用を介してインフルエンザ予防を目指すワクチンは、このような薬剤を使用中の患者に問題なく使えるのでしょうか。新たな機序の治療が登場するたび、既存の検査や治療との関連を確認する必要が出てきます。今回はICI使用中のインフルエンザワクチン接種について調べました。
Chong CR et al.
Clin Infect Dis. 2019 Mar 15.
Safety of Inactivated Influenza Vaccine in Cancer Patients Receiving Immune Checkpoint Inhibitors (ICI).
【背景】
がん患者はインフルエンザに関連した合併症のリスクが高い。インフルエンザワクチン がICI視聴中患者の免疫イベントを増強するか否かについては不明確である。
【方法】
連続した3期間(2014-2015, 2015-2016, 2016-2017年)、インフルエンザワクチン接種を受けたICI使用中進行がん患者の後方視的検討をおこなった。主要評価項目は何らかの“新規”IRAE”とした。副次解析として、PD-1阻害剤(nivolumab or pembrolizumab)で新たに治療を受けたワクチン被接種患者について、すでに報告されている試験と比べてIRAEが多いかどうかを検討した。
【結果】
三つの期間で、370名の患者がICI+2ヶ月以内のワクチンという基準を満たした。背景がんはもっとも多かったのが肺がん(46%)、次が悪性黒色腫(19%)であり、61%の患者はPD-1阻害薬のみを投与された。コホート全体で、20%がIRAE(グレード問わず)を経験した。グレード3または4の毒性は8%だった。グレード5のイベントは起こらなかった。新たにPD-1阻害薬で治療を受けたサブ解析群170名において、全IRAE率は18%、グレード3または4の毒性は7.6%だった。インフルエンザと診断された患者が2人いた。
【結論】
ICI+2ヶ月以内の不活化インフルエンザワクチンの患者においてIRAEの発生率や重症度増加は認められなかった。新たにPD-1阻害薬で治療を受けた患者において、IRAE率は既報の研究と同等であり、投与順序によっても変わりはなかった。ルーチンの季節性インフルエンザワクチン接種は、ICI使用患者にも推奨される。
【まとめと感想】
今後患者さんによってはご本人からも相談がありうる内容と思いますが、見解を示す一つの資料として参考になりました。ワクチン接種を避けるべき状況ではなさそうです。