【総説】結核
*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。
*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。
結核は長きにわたって医療上の重要な課題であり続けています。Satsunoxが医療をしている日本のある地域、ある医療機関では「忘れた頃にやってくる」疾患という印象ですが、やはり重要な病原体であり、興味深いとも思います。
そんな結核についての総説がありましたので、学びました。
Tuberculosis.
Lancet. 2019 Apr 20;393(10181):1642-1656.
【導入】
世界の結核情勢は悲惨な状態にある。しかしながら、現在は大きな兆候と発見のときでもある。
【疫学、病理、リスク因子】
WHOによると、2017年で推定1000万人が結核に新規罹患している。このうち870万人(87%)が30の高蔓延国に住んでいる。
結核は貧困の病である。ほとんどの高収入国では推定発症率は年間10万人あたり10人未満であるのに対し、30の高蔓延国(ほとんどが低〜中収入国)では推定発症率は年間10万人あたり183人である。
現在、いくつかの“キー”国ではリファンピシン耐性結核の有病率は上昇している。それらの国にはロシア、ミャンマー、中国、南アフリカが含まれる。
【診断】
結核診断においていくつかの進歩があったものの、信頼できる・単純な・即座に結果の得られて確定診断できる検査は存在しない。
LAM; lipoarabinomannanという物質は結核が宿主(ヒト)内で産生し散布する多数のタンパク質のうちの一つである。尿中LAMの検査が結核の死亡減少と関連があった、とする報告がある。尿中LAM検査が現在推奨されている対象はHIV感染者、CD4陽性細胞数が100/mcl未満の患者、重篤な病態にある患者、そして入院患者である。より高感度のLAM検査が発達してきており、HIV非感染者で小児患者や外来患者もふくめた結核の迅速診断への期待感が示されている。
【治療】
結核治療の見通しは過去5年で大きく変わった。その理由は二つの新たな薬剤の登場;bedaquilineとdelamanidである。これらを用いた多数の臨床試験が、あらゆる形態の結核治療を変えている。現時点では、感受性良好の結核に対しては従来の4剤治療レジメン(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール)である。bedaquilineはジアリルキノロン系抗菌薬に分類され、抗酸菌ATP合成を阻害する。delamanidはニトロイミダゾール系抗菌薬に分類され、ミコール酸合成を阻害する。過去5年で進歩した同じニトロイミダゾール系抗菌薬にはpretomanidがある。あるシングルアームの研究では、超多剤耐性結核菌をもつ患者に6ヶ月〜9ヶ月の高用量リネゾリド(1200 mg/day)、bedaquiline、pretomanidを投与、89%が治癒し12ヶ月フォローでも寛解を保っていた。
他の新規薬にはbenzothiazone系薬、DprE1阻害薬、抗酸菌呼吸鎖阻害薬(ex; telacebec)、そしてimidazopyridine系薬があげられる。
repurposed drugへの関心も高まっている。代表はリネゾリドである。その他としてはclofazimine。 kanamycin, capreomycin, pyrazinamide, ethionamide, para-aminosalicylic acidが臨床試験で用いられることがあるが、これらは治療アウトカムで劣ることが確認されている。
【まとめと感想】
現時点では日常臨床における診断・治療内容が大きく変わっているとは言いがたいようです。耐性結核の有病率が上がっているという困難がある一方で、診断・治療も研究は進んでいるようです。少なくとも診断に関して、迅速診断で薬剤感受性まで分かるようになっているということは驚きでした。