CMEは犀の角のように。

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【原著】骨・関節感染症に対して、6週間の内服抗菌薬は、静注に比べて1年予後は劣らない。

*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。

*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。

 

長期の抗菌療法が必要な感染症は患者にとって大きな負担になります。経済的観念は当然のことながら、生活の観点からも負担でしょう。点滴が必要であれば退院は困難であり、生活の質(QOL)は大きく損なわれると思います。

この点について調べた研究を読みました。

 

Oral versus Intravenous Antibiotics for Bone and Joint Infection.

Li HK, et al. N Engl J Med. 2019.

PMID 30699315

 

【試験デザイン】

多施設、オープンラベル、並行グループ、ランダム化比較、非劣性試験。

【背景】

複雑性整形外科感染症では、常に長期の静注抗菌薬治療がなされる。経口抗菌薬治療が静注薬と比べて非劣性かどうか調べた。

【方法】

英国にある26施設の骨または関節感染症治療を受けている成人患者を組み入れた。術後7日(非手術例では抗菌療法開始から7日)以内で、治療のはじめの6週間を静注群と経口群とにランダムに振り分けた。両群において引き続き経口抗菌薬を使用することは許可。主要評価項目はランダム化1年後以内の確定的な治療不良。非劣性マージンは7.5%。

【結果】

1054名の参加者(各群527)の中で、終了時データが利用可能だったのは1015名(96.3%)。治療不良は静注群で74/506名(14.6%)、経口群で67/509名(13.2%)。終了時の欠損値(39名、37%)は補完処理された。ITT解析で確定的な治療不良のリスク差は-1.4%(90% CI, -4.9 to 2.2; 95% CI, -5.6 to 2.9)と、非劣性が示された。完遂例、per-protocol例および感度分析でも本結果を支持するものであった。各群の有害事象発生率に有意差はなかった(静注群146/527(27.7%)、経口群138/527(26.2%) )。副次評価項目としてのカテーテル合併症は静注群で多かった(9.4% vs 1.0%)。

【結論】

複雑性整形外科感染症に対して用いられる経口抗菌薬は、1年の時点では静注と比べて劣らなかった。

 

【まとめと感想】

本研究における整形外科感染症とは、具体的には骨髄炎、関節形成術を要する自己関節感染症、整形外科デバイス感染、椎体骨髄炎。重症度や複雑性に目立った偏りはなさそうです。

抗菌薬の選択は感染症の専門家がおこなった、とのことです。薬剤種など具体的使用方法について記載は本文中には見当たりませんでした。

本研究の抗菌薬使用の妥当性については感染症の専門家によって担保されています。つまり本研究結果を臨床に反映しようとする場合、感染症の専門家が参画することが必要である、とも言ってよいのではないでしょうか。