【原著】多剤耐性株を含む腸内細菌による複雑性尿路感染症に対して、1日1回のプラゾマイシンはメロペネムに非劣性を示した。
*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。
*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています。
多剤耐性菌は現在の感染症界のみならず医療界における重要課題といえます。2050年には世界中で年間1000万人が耐性菌による感染症で亡くなるという試算もあります1)。
多剤耐性大腸菌による尿路感染症の治療について調べた研究を読みました。
Once-Daily Plazomicin for Complicated Urinary Tract Infections.
N Engl J Med. 2019 Feb 21;380(8):729-740.
【試験デザイン】
多国籍、多施設、二重盲検ランダム化比較試験。
【背景】
尿路病原性のグラム陰性菌の薬剤耐性が増加しており、深刻な感染症に対する新たな治療戦略が必要である。プラゾマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬であり、カルバペネム耐性を含む多剤耐性腸内細菌科に対して殺菌作用を有する。
【方法】
急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(複雑性UTI)の患者609名をランダムに1対1に振り分け、プラゾマイシン点滴(15 mg/kg 1日1回)またはメロペネム点滴(1 g 8時間毎)で投与した。最低4日の点滴治療後、経口薬へステップダウンし、合計7〜10日間の治療をした。主要目的は複雑性尿路感染症治療におけるプラゾマイシンのメロペネムに対する非劣性で、非劣性マージンは15%とした。主要評価項目は5日時点、および治癒評価受診時(治療開始後15〜19日)での複合治癒(臨床的治癒および細菌学的根絶)とし、細菌学修正を加えたITT解析をした。
【結果】
プラゾマイシンは主要効果指標に関してメロペネムに非劣性を示した。5日目で、複合治癒はプラゾマイシン群で88.0%(168/191名)、メロペネム群で91.4%(180/197名)であった(差-3.4ポイント; 95% CI, -10.0 to 3.1)。治癒評価受診時、複合治癒はプラゾマイシン群で81.7%(156/191名)、メロペネム群で70.1%(138/197名)であった(差11.6ポイント; 95% CI, 2.7 to 20.3)。治癒評価受診時、プラゾマイシン群の患者の方が高い割合で細菌学的根絶がみられた。それらにはアミノグリコシド系非感受性の腸内細菌科(78.8% vs. 68.6%)、ESBL産生腸内細菌科(82.4% vs. 75.0%)も含まれた。後期フォローアップ(治療開始後24ー32日)では、プラゾマイシン群のほうが細菌学的再発(3.7% vs. 8.1%)、および臨床的再発(1.6% vs. 7.1%)が少なかった。血清Cr値が基準値を0.5 mg/dl以上超える上昇はプラゾマイシン群で7.0%、メロペネム群で4.0%であった。
【結論】
多剤耐性株をふくむ腸内細菌科による複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎に対して、1日1回のプラゾマイシンは、メロペネムと比べて、非劣性を示した。
【ほか】
プラゾマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬である。アミノグリコシド修飾酵素による修正を避けるように作られている。腸内細菌科における耐性獲得機序のほとんどに対して活性を維持する。
【まとめと感想】
多剤耐性を示す菌に対する治療オプションが増えることは望ましいことと思います。しかしながら、病原微生物の耐性獲得ペースに人類の新戦略獲得ペースが対応しきれていない現状は依然としてあると思います。その点をどうしていくか、人類が答えを得、克服できるときが来るのでしょうか。
【参考文献】
1) Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations, the O’Neill Commission, UK, December 2014