CMEは犀の角のように。

独学で世界標準の臨床内科学を継続的に学習する方法、をさぐります。

【原著】研修医に対して業務拘束時間を柔軟に調整することは、標準的拘束時間で勤務するのと比べ、患者の30日死亡や他のアウトカムへ悪影響しない。

*文献を翻訳した内容の部分は黒色で記載しています。

*Saitsunoxの考えた内容の部分は青色で記載しています

 

 研修医の過労は少し前(何年か前=かなり前?)に日本でも話題となりました。そしてこの4月から、いわゆる働き方改革法が施行されました。研修医に限らず、医療界に限らず、働き方を法のもとで見直す必要に迫られているのでしょう。

 今回は法的観点ではなく、医療安全(つまり医療の質)的観点から研修医業務時間について検討した文献に出会いました。

 

Patient Safety Outcomes under Flexible and Standard Resident Duty-Hour Rules.

N Engl J Med. 2019 Mar 7;380(10):905-914.

PMID: 30855740

 

【背景】

研修医プログラムにおける過剰な長さの勤務が患者安全に悪影響を与える可能性について、懸念が続いている。

【方法】

2015-2016年度の間、63個の内科研修プログラムにおいてクラスターランダム化比較、非劣性試験をおこなった。プログラムは下記2群に分けられた。標準業務群;米国大学院医学教育認定評議会(Accreditation Council for Graduate Medical Education; ACGME)が2011年7月に適用した内容で働く群(標準プログラム群)、とフレキシブル群;より柔軟に勤務時間を設定し勤務の長さ上限や勤務間の時間に縛りなく働く群、とに分けた。主要評価項目は前3年と後3年とで比較した非調整30日死亡率とした。設定仮説として、フレキシブル群は標準プログラム群と比べて劣らない(非劣性マージン1%)、とした。副次評価項目は他の5つの安全基準、および全指標に関するリスク調整アウトカムとした。

【結果】

30日死亡率(主要評価項目)は、フレキシブル群(前3年で12.5%、後3年で12.6%)について、標準プログラム群(前3年で12.2%、後3年で12.7%)と比べて非劣性であった。非劣性性は統計学的に有意(p=0.03)であり、1%の非劣性マージンに対して95%信頼区間の下限は0.93%であった。7日時点での非調整再入院割合、患者安全指標、そしてMedicare支払いの違いは両群間で1%未満であった。30日以内の再入院率、在院日数の長さについて非劣性基準は満たさなかった。リスク調整指標は全体に同様の結果であった。

【結論】

研修医の勤務時間を柔軟に調整できるようプログラム管理者に権限を委ねることは、患者の30日死亡やその他の患者安全指標について悪影響は与えなかった。

 

【まとめと感想】

研修医が患者アウトカムに直接的に影響しうる業務内容を担当している、というのが本研究の前提として必要と思います。つまり、もし「研修医は指導医の後をついているだけ」的な研修プログラム下で同様の結果が出たとしても、それを受けて研修医勤務時間短縮が妥当であるとは言い難いと思います。